英語を上達させるプロセスについて考える

ひとりの英語学習者の試行錯誤の記録

第19回 これから英語学習を始めようと思っているひとが最初の4週間でやるといいと思うこと

ちょっとタイトルが長くなってしまったけど、ぼくがときどき参加している英会話サークルに、これから本格的に勉強していきたいんですってひとがたまに参加していて、そういうひとのなかには、意欲はあるんだけど何から手をつけていいのか分からないひとがいるので、そういったひとに参考にしてもらえたらと思う。

4週間っていうのはあんまり意味はなくて、軌道に乗るまでの日数ってことで、2週間ののひともいるだろうし、8週間のひともいるだろうし、その辺は適当で。いちおう、下記のスケジュールは土曜日スタートで、時間のかかりそうな作業を土日に割り当てられるようにしてある。

ざっくり言うと、やることは現状把握→計画づくり→ルーティンの確立です。

■ 1日目 準備: 教材選び

いちばん最初にやるべきことはいい教材を見つけること。

最初に必要な英語の教材は大きく分けて五種類あって、

(1) 基礎的な文法解説書
(2) 基礎的な単語集
(3) 基礎的な発音の解説書
(4) 実践的な英会話や英作文の文例集
(5) 特定のテスト対策のための解説書や問題集

これらのカテゴリーから自分に合ったものを一冊ずつ選んで買う。テスト受ける気がないのであればもちろん (5) は不要。注意点は、文法書以外はできるだけCD-ROM 付きのを選ぶこと。リスニングも兼ねて、単語や簡単な例文を聞き取れるようにしておくといい。

Amazon でも買えるけど、自分で大きめの書店に行って選んだ方がいいように思う。もちろん、みんながオススメしている有名な本なんかはネットで買っても問題ないんだけど。

とりあえず買ってしまって、お金使ったからやらなきゃっていうマインドをつくるっていう意味合いもある。こういうの必要ないくらいモチベーション上がっているひとは現状分析からやった方がいいかもしれないけど。

選ぶポイントとしては、易しすぎず難しすぎず、というところで、パラパラとめくって全体の 45〜60% 理解できるくらいがちょうどいいんじゃないかっていう感覚がある。


学生時代にちゃんと授業を受けていて理解していたひとも、確認の意味で5冊持っといてもいいかもしれない。

ちなみにぼくのオススメは (あんまり本を持ってないので他にいいのがたくさんありそうなんだけど、少なくとも大いに活用した本ばかり)、以下のようなかんじです、参考までに。

(1) 基礎的な文法書

一億人の英文法 ――すべての日本人に贈る「話すため」の英文法(東進ブックス)

世間的には、文法書は「一億人」か「Forest」か、みたいなかんじになっちゃってるけど (なってないか)、まぁ、分かりやすい方を選べばいいと思う。大西さんの語り口が好きじゃないひともいるだろうし(笑)

中学レベルの文法が不安な場合は、「中学英語 やり直し」みたいな本が何種類かあるから、一冊選んで先にやるとよい。

(2) 基礎的な単語集

プログレッシブ 英語コロケーション辞典

実はぼくは単語集はこれしか買ったことないので、他は分からないんだけど(笑)、この本は買って損はないと思う。

単語集は自分の語彙レベルを知ってから買った方がいいと思うので、書店でパラパラめくって、ちょうどいいのを見つけてください。一般的には12,000くらいあればいいと言われているけど、習得の段階というものがあるから、自分のペースに合わせて増加させていくといいんじゃないだろうか。

コロケーション、という、ある単語がどういった文脈 (どの単語とセット) で使われるか、ということを考慮してつくられているので、ただ単語を覚えるだけじゃなくて、使い方まで覚えられる (CD-ROM が付いてないのは残念なんだけど)。

(3) 基礎的な発音解説書

CDBフォニックス<発音>トレーニングBOOK (アスカカルチャー)

基本的な発音についての理解は早い段階で必要だと思っていて、もちろんリスニングやスピーキングには直接影響あるけど、リーディングやライティングにも影響あるんじゃないかと思う。というのは、実際に口に出して言わなくても、頭の中で読むわけだから、読み方が分からないならまだしも、間違って覚えていたりするとその悪い癖がなかなか抜けなくなってしまってあとあと矯正するのが大変になる。

というわけで、早い段階でのルーティンに発音は入れておくといいと思う。

(4) 実践的な英会話や英作文の文例集

どんどん話すための瞬間英作文トレーニング (CD BOOK)

文法事項に沿った例文集か、実用的な表現集かで迷ったんだけど、長い目で見るなら最初から表現集には手をつけずに、基本的な文法事項に沿った例文集がいいと思う。

ただ、この瞬間英作文シリーズの例文は教科書的な、実用的とはほど遠い文もあるので、これを実践で使うことはあんまり考えない方がいいと思う。

もし、文法事項に沿っていて、かつ、実用的な例文が載っている例文集があれば教えてください。

「DUO」も人気高いみたいだけど、ちょっと例文が難しいかなぁと思うので、今回はパス。

(5) 特定のテスト対策のための解説書や問題集

ゼロからはじめて600点取れるTOEICテスト勉強法

最初は 600 点を目指して始めるのがいいと思う。「これ一冊で600点」みたいな本を一冊買って、足りないところをあとで補っていくといい。

番外編 勉強法についての書籍

あ、あと、参考書として、勉強法について書いてある本も一冊読むといいんじゃないかと思う。勉強法の類はネットにもたくさんリソースがあるけど、手元に置いておいてすぐにぱらぱらと読めるっていうのは本の利点。

一生モノの英語勉強法――「理系的」学習システムのすすめ(祥伝社新書312)

とにかくたくさん出ていて、どれがいいのか迷うけれども、立ち読みしてピンとくるのを選べばいい。

会話中心とか、通訳・翻訳みたいなプロフェッショナル目指してるひと向けとか、いくつかカテゴリーがあるので、それだけ間違えないようにすれば、いいと思う。

■ 3〜6日目 現状分析: 文法理解度チェック

まずは文法書を通して読む。必ず最初から最後まで通して読む。

読むペースはひとそれぞれだから、3日で終わるひともいるし、1週間かかるひともいるし、その辺は適当に。

大事な点は、自分のウィークポイントと、分かってるつもりだけど分かってなかったところを探すこと。後者はともすると見落としがちなので、飛ばし読みせず、隅から隅まで読もう。よく分からないところ、勘違いしてたところはあとで重点的に復習するので、付箋貼っておくなり、ページ番号メモっとくなりして、漏れのないようにしておく。

■ 7日目 現状分析: ボキャブラリーチェック

自分のボキャブラリーを知る。3日で文法書を読み終わったという前提なので、日数は無視してください(笑)

文法の理解度チェックの合間にやってもいい。それほど時間かからないので。

自分の知ってる語彙数がどれくらいなのかを知るのに最適なのは、Weblio の語彙力診断

ユーザー登録すると、履歴を保存できたり、自分専用の単語帳をつくれたりして便利なので、ぜひともユーザー登録してみてください。

ここで数回程度診断テストを受けてみて、平均して 3000 〜 5000 語くらいと判定されれば、中高レベルの単語は大方理解できるレベルなんじゃないかと思う。

5000より低ければ、ある程度の時間を取って、基礎的な単語集を集中的にやった方がいいかもしれない。

市販の単語集はだいたいレベル別で分けられてるので、判定結果と、今後どのくらいまで伸ばしていくか、という希望を踏まえて、本を買うなり、放置するなりしてください。

ぼくは個人的にボキャビル苦手っていうか嫌いなのであんまりやってないんだけど、英語のニュースやブログ記事読んで分からない単語がたくさんあるとそれはそれでストレスなので、がんばって覚えるようにしています。

■ 8〜9日目 計画づくり: 目標を立てる

文法知識とボキャブラリーについての自己分析と直近の目標を定めて、ロードマップをつくっていく。

いちばん大事なのは、自分が英語を使えるようになってなにをしたいか。言語はコミュニケーションの道具なので、それを使ってなにをするかっていうのが明確にないと、目標が立てられないし、モチベーションも続かないだろうし。そういう最終的なゴールに向けてブレイクダウンしていくかんじになるので、ここがぼんやりしているひとはそもそもあまり必要と感じてないんじゃないかと思うので、そういう根本的なところから自省してみるといいんじゃないだろうか。

ここでは一般化して4技能+発音、ボキャブラリーで考えていくんだけど、優先すべきはリーディング、ライティング、発音、ボキャブラリーだと思う。というのは、リスニングとスピーキングには瞬発力が求められるので、最初のうちはじっくり取り組むために、この4つにフォーカスしたい。

そういう意味では、TOEIC は手っ取り早く目標を立てやすくて、リーディングとライティングの実力を測れるので、テストに抵抗なければ、受けとくといいと思う。ただし、ビジネス分野中心の出題なので、そこら辺は注意が必要。

ここでは、テストを受けないひと向けのガイドラインというか、どういった目標を立てたらいいのかについて言及しておく。

第4回 英語で自己紹介 - 英語を上達させるプロセスについて考える にも書いたんだけど、まずは自分のことを説明できるようになるっていう短期的な目標を立てるといいと思う。

例えば、5分間自分のことについて話す機会を与えられたと想定して、それくらいのボリュームの自己紹介文をつくるのに必要な文法知識と語彙を得ること。

それから、趣味や自分の興味のある分野について深堀りするポイントを見つけて、ネット上の記事 (もちろん英語の) を読んだり、これって英語でなんて言うんだろうって単語調べたりしていくかんじで。

その後、外国人と話したい、とか、映画を字幕なしで観たい、とか、色んな動機があると思うので、それに応じて方向性を決めればいいんじゃないだろうか。

ぼくの場合は、外国人とコミュニケートしたいってのが動機だったので、途中でスピーキング中心に移行したけど、最近またリーディングを重点的にやってたりして、その都度考えながらやっている。

計画づくりは1日でやるんじゃなくて、数日かけてじっくりやった方がいい。勉強法を中心に、書籍やウェブサイトからいくつか情報を仕入れ、自分がよさそうだなってかんじたところの文章をじっくり読んで参考にする。

■ 10〜12日目 計画づくり: 学習スケジュール

ここでのポイントは、1日・1週間単位で、どのくらい時間を割けそうか、無理のない範囲で計画を立てること。

最初はやる気に満ち満ちているだろうから、ちょっと無理めのスケジュールでもいいかもしれないけど、優先順位を付けて、削っていいもの悪いものを切り分けておくことは大事。最初の勢いはどうせ長続きしないって考えといた方が、嫌になって途中で全部投げ出しちゃうよりはまし。

ちなみにぼくの標準のルーチンは、

  • TOEICカレンダーのクイズを解く 2分
  • 声出し (自分で選んだ英文を声に出して言う) 5分
  • リスニング (教材に付属のCD-ROM をディクテーション) 20分
  • 音読 (上記の英文を音読) 10分
  • Fullmetal Alchemist を読む 30分
  • 英語のニュースを読む (VOA や Umano の場合は音声も) 15分
  • オンライン英会話 25分
  • 日記を書く 15分

で、忙しさや気分に応じてひとつふたつやらなかったりするけど、だいたい60〜75分くらいは割くようにしている (最近は Fullmetal Alchemist にハマっているので、これを中心に回っているかんじ)。少なくとも朝の声出しとTOEICカレンダー、寝る前に日記を書くことはやるように心がけてる。

まぁ、これも試行錯誤が必要で、自分にフィットするやり方を見つけるのには時間がかかるので、ひとまずは単語集や例文集を一回りやってみるといいんじゃないだろうか。

基本的には、

  • 発音練習 (口の動きの確認や音の判別)
  • 単語の暗記
  • 例文集や表現集のリスニング、暗記

の三本柱を中心に組み立てるといいと思う。土日により多くの時間が取れるなら、土日曜のカリキュラムを別につくるのもいいね。

■ 15〜21日目 ルーティンの確立: とりあえず決めたルーティンを1週間回してみる

回してみた結果、改善点が出てくれば、次週に改善すべく対策を考えよう。テキストが合わなかったらそれは捨てて別のを買ってもいい。自分に合わないことをやり続けるのは苦痛なので、この辺は割りきってしまっていいと思う。

■ 22〜28日目 ルーティンの確立: 改良版のルーティンを1週間回してみる

一回見直したルーティンを再び1週間回してみよう。よーし、しばらくこれでいこうってなるまで試行錯誤があるかもしれないけど、2,3週回せばなんとなく分かるんじゃないだろうか。

英語学習の場合は、成果が目に見えて出てくるまでに時間を要することも多いので、すぐに上達を実感しなくても、焦らず決まったペースでしばらく続けていくのがいいような気がする。

「しばらく」っていうのもちょっと漠然としてるかもしれないけど、しばらく同じことを繰り返していると、最初の頃に感じていた負荷が、だんだん下がってくるのが分かると思うんだけど、それがほとんどなくなってしまうくらいになったら次へ行けばいいと思う。やっぱり適度に歯ごたえがないと、上達しないと思うし。

学習の進め方についてはみなさん色々意見や経験があるだろうけど、焦ってあれこれ手を出すよりかは、最小限の教材をじっくりやった方がいいっていうのは賛同してもらえるんじゃないかと思う。

逆に言えば、いつまで経っても負荷が下がらないと感じるようならそれはやり方に問題がある可能性が高いので、計画づくりから見直して、もう少しレベルを下げるとか、やり方を変えるかした方がいいかもしれない。

ぼく自身の経験では、単語を調べるとき、英英辞書を使うようにしたら、リーディングのスピードが上がるようになった、というのがあった。最初は英英辞書抵抗あるかもしれないけど、少し無理して使っていくと、そのうち慣れてくるので、負荷高めでもいいっていうひとはぜひ使ってみてください。

■ まとめ
  • 現状分析 → 計画づくり → ルーティンの確立の順で土台作りをする
  • 最初のうちの軌道修正は積極的に
  • 落ち着いたらしばらくその方法を続けよう

次回は...どうしようか考え中...