第13回 効率的なボキャブラリーの増やし方
ぼくは普段あんまりボキャブラリーには時間を割いてなくて、ていうのは記憶学習が好きじゃないからなんだけど、単純作業が嫌いっていうのと、覚えても翌日忘れちゃってやるせなくなるのが嫌だっていう、どうしようもない理由です。とは言え、もうちょっと真剣にやらないといつまでもボキャブラリー増えないよなぁという思いも日々高まっているので、今回このテーマを選んでみた。
やり方に関しては、昔ながらの単語帳に単語と意味を書いただけのシンプルなやり方でやるのももちろんいいんだけど、ここではできるだけ質を追求して、現代風のボキャブラリービルディングについて、より効率的なプロセスについて探ってみようと思う。効率的というのは、一度に大量に覚えるのではなくて、少しずつだけどより確実に覚えるやり方。記憶力の優れたひとは別として、ぼくのような脳細胞がだいぶ死んでるひとにとっては結果的にこっちの方がいいんじゃないかと思う、急がば回れ的な。
まず前提として、PCとスマートフォンを使う。紙には紙のいいところがあるんだけど、効率が圧倒的に違うので、コンピューターを使おう。
それから、第1回 基本的な英語学習プロセスについて - 英語を上達させるプロセスについて考える にも書いたけど、ぼくは最初のうちはそれほど語彙を増やすことに時間を割かなくていいと思う。時間を割くのであれば、難しい単語を覚えるよりも、簡単な単語の使い方を理解する方に使った方がいいと思ってて、例えば、"see" と "watch" の違いを明確に理解して使い分けられるようになることの方が、"observe" とか "glimpse" とかを知っているよりずっと重要だというスタンスです (もちろん全部使い分けられるのがベストだけど)。
■ 使用するアプリケーション
以下の条件を満たしているものがいい。
ぼくは以下のアプリケーションを使っているが、似たようなものであれば他のでもいい。
他にも補助的に以下のアプリやサービスを。
- Evernote - 例文をストックしておく
- Weblio - 単語・例文検索
- Imagict - 単語を画像つきで検索
- えいぽんたん (スマホ用英単語アプリ)
- Real英会話 (iPhone用英会話フレーズアプリ)
Anki と P-Study System (以下、PSS) はフラッシュカードアプリ。
Anki はデスクトップ用のネイティブアプリもあるし、ブラウザ版もあるので、事実上すべてのプラットフォームで使える。
PSS は Windows 専用で、Android にはリピたんという名前のクライアントがある。
どちらもPCとスマホ両方で使えるけど、Anki には学習履歴の同期機能があるので、どちらか一方を使うのであれば Anki をオススメします。
□ 問題をインポート/エクスポートできる
まず第一に、問題をカスタマイズできないと、自分の苦手な分野や興味のある分野を集中的に覚えられないので、これは必須。
□ 出題アルゴリズムを備えている
覚えている単語をなんどもやるのは効率悪いので、記憶に定着していない単語を重点的にやった方がいい。最近の単語学習アプリはこの手のアルゴリズムを備えているんじゃないだろうか。
■ 効率的なボキャブラリービルディング
□ 単語は文で覚える
単語学習用のアプリに登録する際には、単語それのみではなくて、文で登録するようにしよう。例えば以下の単語は、
deprive / 奪う
ではなく、
Many people were deprived of transportation by the accident. / その事故によって多くの人の足が奪われた。
などと入力する。それによって、"deprive" と "transportation" という単語の組み合わせを結びつけて覚えることができるので、ただ単語のみを覚えようとするよりずっと覚えやすい。準備が大変だけど、やるだけの価値はあると思う。
例文は教材やインターネットから探すといい。
ついでに "take away" も覚えておくのがベターなんだけど、句動詞はまた別の機会に。
例文ができたら、お使いのフラッシュカードアプリにストック。
□ 単語は群にして覚える
ある分野であったり、似たような意味であったり、ひとまとめにして一気に覚えてしまった方が、バラバラに覚えるより効率がいいように思う。例えばぼくは昨日のオンライン英会話で銀行について話したんだけど、とある銀行が契約する口座が給与振込みに使われている場合、夜間や休日の引き落とし手数料を無料にするサービスをやっていて、これを気に入っている、という話をした。
One of the banks offers a service which the customers withdraw money without fees if their salaries are paid into the account.
このとき、手数料としてパッと浮かんだのが "commission" だったんだけど、調べてみると販売代理店などに支払う場合に使われるとのことで、銀行の手数料の場合は、"fee" か "charge" が適切だということが分かった。このふたつの違いも調べてみると、"fee" は専門家への支払い (fee to the doctor) や何らかの権利を得るための支払い (entrance fee)で、"charge" は一般的な料金や手間賃 (charge for delivery) という違いがあるようだ。
これで、日本語の「手数料」というものに対する3つの英単語を覚えることができた。
これらも例文をつくってストックしておこう。
□ 実際に使ってみる
使わない単語は覚える必要のない単語と割り切って、自分が使う場面を想像できないのであれば、その単語は割り切って捨ててしまう。
日本語であってもひとによって語彙が異なるのは当然なので、基本単語を念頭に置きつつ、自分の身の回り、あるいは仕事の分野などによって取捨選択していった方がいい。
先ほどの "deprive" はどんな場面で使いそうかなって調べてみると、睡眠不足を以下のように言うことができると分かった。
I'm sleep deprived.
名詞化して
sleep deprivation
とも言える。
これだったら日常会話でも使えるんじゃないだろうか。
これもストックストック。
■ まとめ
- PCやスマホのアプリを使って効率よく覚えよう
- 単語だけでなく文で覚えよう
- 関連する語や似たような意味の語を一緒に覚えよう
- 実際に使ってみよう
ひとつひとつには時間がかかるかもしれないが、例文をつくったり厳密な意味を調べたりすると定着具合はぜんぜん違うと思う。
追記
できるなら英語で覚えるようにするとなおいいと思う。先ほどの "see" と "watch" なら以下のように定義されている。
see - to notice someone or something using your eyes
watch - to look at someone or something for a period of time
(いずれも Macmillan Dictionary より)